お酒に強い・弱いは遺伝子で決まる?ALDH2とADH1Bの話

お酒に強い・弱いは遺伝子で決まる?ALDH2とADH1Bの話
お酒を飲むと、すぐ顔が赤くなる人がいます。
逆に、何杯飲んでもほとんど顔色が変わらない人もいる。
単純に「酒に強い・弱い」と表現されますが、この違いには遺伝子がかなり関係しています。
特に有名なのが、ALDH2とADH1Bです。
アルコールは2段階で処理される
飲んだアルコールは、まず主にADH(アルコール脱水素酵素)によってアセトアルデヒドへ変換されます。
そして、このアセトアルデヒドをALDH2などが酢酸へ変えていきます。
ざっくり書くと、
アルコール → アセトアルデヒド → 酢酸
です。
問題は真ん中のアセトアルデヒド。
顔の紅潮、動悸、気分の悪さなどに関係する物質で、毒性もあります。
そこで重要になるのがALDH2です。
顔が赤くなるかは、かなりALDH2に左右される
2014年に、中国系男性61名へ体重1kgあたり0.3gのアルコールを飲んでもらい、血中のアルコール、アセトアルデヒド、顔面の血流、脈拍などを測った研究があります。
ALDH2の働きが低下するタイプを1つ持つ人では、通常型の人より血中アセトアルデヒドが大きく上昇し、顔面血流や脈拍も大きく増えました。
一方、この実験ではADH1Bの違いによる血中アセトアルデヒドや顔面紅潮への明確な差は確認されませんでした。
つまり、「酒を飲むと顔が赤くなる」という現象については、ALDH2の影響がかなり大きいようです。
ではADH1Bは何をしているのか
ADH1Bも、お酒への反応に関係する重要な遺伝子です。
こちらはアルコールからアセトアルデヒドへ変換する最初の段階に関わります。
日本人5,724名を対象にした研究では、ADH1BとALDH2の遺伝子型はいずれも飲酒行動と強く関連していました。
特にALDH2の働きが非常に弱いタイプでは、その研究に参加した人は全員が非飲酒者でした。
つまり「お酒への強さ」は、単に一つの遺伝子だけで決まるというより、アルコールを作り変える側と、できたアセトアルデヒドを処理する側の組み合わせとして考えた方がよさそうです。
「飲める=身体が強い」とも限らない
ここが遺伝子検査で面白いところです。
ALDH2の働きが低い人でも、必ず「まったく飲めない」とは限りません。
日本人男性を対象にした研究では、「現在お酒を飲むと赤くなるか」だけではなく、「昔、飲み始めた頃に赤くなっていたか」まで聞くことで、ALDH2の働きが低い人をより正確に見分けられることが示されています。
「昔はすぐ赤くなったけど、今は普通に飲める」
という人もいるわけです。
なので、現在たくさん飲めるからといって、それだけでアセトアルデヒドを処理しやすい体質だとは判断できません。
遺伝子によっては、飲酒時のリスクにも差が出る
ALDH2やADH1Bの違いは、単に酔いやすさだけの問題でもありません。
日本人を対象とした研究では、ALDH2とADH1Bの特定の遺伝子型、飲酒、喫煙が、それぞれ食道扁平上皮がんのリスクと関連していました。
もちろん、遺伝子を持っているからがんになる、という話ではありません。
飲酒量や喫煙など、生活習慣と組み合わさってリスクは変わります。
ここは結構大事です。
遺伝子検査の目的は、
「あなたは酒に弱いです」
と判定して終わることではありません。
なぜ弱いのか。どこで代謝が詰まりやすいのか。そして、その体質なら飲酒とどう付き合うか。
そこまで考えて、初めて使える情報になります。
お酒に限らず、遺伝子検査は未来を決めるものではありません。
ただ、自分の身体の取扱説明書を少し細かくする材料にはなる。
Weavingでも、遺伝子検査の結果を栄養や運動、生活習慣を考える材料の一つとして活用しています。
参考文献
- Peng GS, et al. ALDH22 but not ADH1B2 is a causative variant gene allele for Asian alcohol flushing after a low-dose challenge: correlation of the pharmacokinetic and pharmacodynamic findings. Pharmacogenetics and Genomics. 2014.
- Tsuchihashi-Makaya M, et al. Gene-environmental interaction regarding alcohol-metabolizing enzymes in the Japanese general population. Journal of Human Genetics. 2009.
- Yokoyama T, et al. Alcohol flushing, alcohol and aldehyde dehydrogenase genotypes, and risk for esophageal squamous cell carcinoma in Japanese men. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention. 2003.
- Cui R, et al. Functional variants in ADH1B and ALDH2 coupled with alcohol and smoking synergistically enhance esophageal cancer risk. Gastroenterology. 2009.

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